銀行のオープンAPIとは?
経済産業省は「未来投資戦略2017」のなかで、「2020年6月までに80行程度以上の銀行におけるオープンAPIの導入を目指す」としています。
ここでいう銀行のAPIとはなんでしょうか。また、銀行がAPIを公開すると、誰にどのようなメリットがあるのでしょうか。
口座情報を外部から参照・更新できる
銀行のオープンAPIとは、いままで銀行が蓄積・管理してきた情報を、外部から参照・更新できるようにする仕組みです。
例えば、いままでは銀行だけが操作することのできた顧客の口座情報を、金融ベンチャーの開発したアプリやウェブサービスなどから参照したり、更新することなどが可能となります。
もちろん顧客の同意が前提であり、セキュリティに配慮された仕組みとなっています。
家計簿アプリが銀行APIを利用するケース
例えば、ある銀行の顧客が、金融ベンチャーの提供する家計簿アプリを使って、自分の金融資産を管理するケースを考えてみましょう。
家計簿アプリを経由して自分の銀行口座データを操作するには、家計簿アプリから銀行の口座データにアクセスできなくてはなりません。
これを実現するには、あらかじめ銀行側が顧客の口座情報を安全、かつ、簡単に提供できる仕組みを用意しておく必要があります。
それを実現するのが、API(Application Programming Interface)です。APIとは、データベースを公開する側の定めたルールに従って外部のプログラムから問い合わせることで、必要なデータを取得できたり、特定のデータを更新できるようにする仕組みです。
この例では、データベースを公開する側が銀行、外部のプログラムから問い合わせをする側が家計簿アプリです。
当然ながら、銀行側はセキュリティに配慮した仕様のAPIを用意する必要があります。一方、家計簿アプリを開発する金融ベンチャー側は、銀行の定めたAPIの仕様に従ってプログラムを作成する必要があります。
誰にどんなメリットがある?
銀行がAPIを公開することで、誰にどんなメリットがあるのでしょうか。
金融ベンチャーにとっては、家計簿アプリや会計ソフトサービスなどの新しい金融サービスが提供できるようになります。
消費者にとっては、自分の銀行口座を家計簿アプリから操作できるようになるなど、より便利で簡単に金融資産の管理ができるようになります。
例えば、今まで銀行のATMまで行かなくてはできなかった操作が、スマホのアプリから実行できるようになればより便利になるでしょう。
また、例えば、買い物のおつりをアプリ経由で自分の口座に入金できれば、小銭が増えず自然に貯金もできて便利かもしれません。
日本政府はキャッシュレス化を進めたい
経済産業省は、2015年時点では18.4%であったキャッシュレス決済比率を2027年6月までに4割程度に引き上げる目標を掲げています。
日本政府がキャッシュレス化を推進するのは、日本を訪れる外国人観光客による消費額が増え続けるなかで、現金しか使えない状況を改善して機会損失を減らしたいという狙いがあります。日本社会は諸外国に比べるとキャッシュレス化が遅れており、外国人観光客からすると支払いに不便と感じる場面が少なくないのです。
また、日本の労働人口が減少していくなかで、人手のかからないキャッシュレス決済へと移行させたいという狙いもあります。現金の取り扱いには多大なコストがかかりますが、キャッシュレス化を進めることで労働者不足を改善して通貨発行に掛かる費用も下げたいのです。
銀行によるAPI公開は、日本政府にとってはキャッシュレス化を推進するための方策のひとつです。銀行によるAPI公開を増やすことで様々な金融ベンチャーの参入を図り、消費者の利便性を向上させてキャッシュレス決済を広く一般普及させたい狙いがあります。