各国のキャッシュレス化

キャッシュレス化

各国のキャッシュレス化の状況

下のグラフは、2015年時点での各国のキャッシュレス決済の状況を表したものです。

出典:経産省「キャッシュレスビジョン(PDFファイル)

このグラフをみると、諸外国に対して、日本のキャッシュレス決済比率が際立って低いことが分かります。

韓国(89.1%)・中国(60.0%)・オーストラリア(51.0%)・スウェーデン(48.6%)・アメリカ(45.0%)に対して、日本のキャッシュレス決済比率は、2015年時点では18.4%にとどまっています。

韓国のキャッシュレス化

韓国では、1997年にアジア通貨危機で大きな打撃を受けたことが転機となり、国策としてキャッシュレス化が進みました。

韓国政府は金融改革のひとつとして、クレジットカード利用の促進を掲げます。一年間のクレジットカード利用合計額の20%を所得控除するなど、クレジットカードを利用する様々なメリットを国民に与えると同時に、一定以上の売り上げのある事業者にはクレジットカード対応を義務付けました。

2017年には、韓国銀行(中央銀行)がキャッシュレス化(コインレス化)を推進するべく、買い物で現金払いした場合のお釣りを、硬貨ではなくプリペイドカードや携帯電話にチャージして受け取れるサービスを開始しています。

このサービスには大手コンビニ・スーパー・薬局などが参加しましたが、サービス導入により、コンビニでの交通系ICカードの売り上げが伸びたという調査結果が報告されています。

中国のキャッシュレス化

2002年、中国初のクレジットカードとなる銀聯カードが発行されました。銀聯(ぎんれん)は、UnionPayという名称で呼ばれることもあります。銀聯カードの普及により、中国国内ではキャッシュレス化が進みます。

銀聯カードを発行する中国銀聯(ちゅうごくぎんれん)は、中国人民銀行(中央銀行)が中心となって設立された企業です。もともとは中国政府が主導して中国国内の電子決済システムを統一するという大きな目的があり、銀聯カードはその国策の流れのなかに位置付けられます。

その後、スマートフォンの普及により、中国ではスマホ決済が主流になります。スマホでQRコードを読み取って支払額を入力すると、銀行口座から引き落とされる仕組みです。

中国では、アリババが提供する「アリペイ」や、テンセントが提供する「ウィ―チャットペイ」の利用者が飛躍的に増加しており、今後ますますスマホ決済サービスが大きな役割を担っていくことが予想されます。

スウェーデンのキャッシュレス化

スウェーデンでは、2011年頃からクレジットカード決済端末が街中の店舗に急速に普及して、2012年には複数の銀行が共同開発した「Swish(スウィッシュ)」というスマホ決済サービスが開始され、個人間送金で多くのユーザーに利用されて普及しました。

2018年現在、キャッシュレス先進国とされるスウェーデンでは、国家が法律で定めたデジタル通貨「eクローナ」の導入が進められています。2019年にはテストが行われ、2021年から実際の流通が開始する計画となっています。

eクローナは、スウェーデンの中央銀行であるリクスバンク(Riksbank)が開発を進めるデジタル通貨です。eクローナ利用の具体的なイメージとしては、リクスバンクにデジタル通貨の口座をつくり、それを自身のスマホと紐づけます。そして、買い物の際にスマホ決済すると、リクスバンクの口座から自動的に引き落とされる仕組みです。

国家が法律で定めたデジタル通貨を発行するのは世界初の試みです。高齢者を中心に反対も根強いらしく、この試みが成功するかどうかは未知数です。ただ、将来的に世界の通貨がデジタル化していく流れは避けがたいものがあります。民間企業にデジタル通貨の覇権を握られる前に、政府が動いて仕組みを構築しようとする挑戦は注目に値します。

アメリカのキャッシュレス化

アメリカでは、クレジットカードやデビットカードによる決済が主流です。

アメリカでは、クレジットカードやデビットカードを使って期日通りに支払うと、個人信用情報機関が提供する「FICOスコア」という信用スコアが上がります。クレジットカードの使い方によって、個人の信用力が判定されるのです。

FICOスコアは、クレジットカードやローンの支払い履歴や、借り入れの状況などをもとに算出されますが、FICOスコアが低いと賃貸物件が借りにくくなったり、就職に不利になることがあります。逆にFICOスコアが高いと住宅ローンの金利が低くなるなどのメリットが得られます。

日本のキャッシュレス化

2018年現在、日本のキャッシュレス決済比率は20%程度です。日本政府は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて、キャッシュレス化を進めようとしています。日本を訪れる外国人観光客に日本国内での消費を増やしてもらうには、キャッシュレス化が不可欠なのです。

日本政府はまた、2019年10月の消費税増税のタイミングに合わせて、キャッシュレス決済でポイント還元する仕組みを導入することを議論しています。このポイント還元策への国費投入は少なくとも数千億円と見込まれています。もしかすると、これを機に日本のキャッシュレス化が進むのかもしれません。

日本政府の掲げる具体的な目標としては、2020年6月までに80行程度以上の銀行におけるオープンAPIの導入を目指し、2027年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にすることなどが挙げられています。現在の2割程度のキャッシュレス決済比率を、2027年までに4割に伸ばす目標です。

交通系ICカードの普及やクレジットカードのポイント還元など、消費者目線では便利さやお得さからキャッシュレス化の進む地盤は整いつつあるようにも見えます。一方で店舗にとっては、決済端末の初期導入コストや決済手数料の負担があり、簡単にキャッシュレス対応というわけにはいかないようです。

今後、日本のキャッシュレス化が今よりも進むのは間違いないでしょう。それがどの程度まで進むのかについては、他国の事例をみてもやはり日本政府の立案する国策に掛かっていると思われます。特に通貨のデジタル化については、民間ではなく国家が主導して行うべき大事業と考えます。日本政府の果たす役割に期待したいところです。